頑張った自分を守るために知っておきたい「認知の歪み」の話

自信作に「ズレ」があるかもしれないという前提

何日もかけて仕上げたプログラム、自分が一生懸命つくった資料やデザイン、できればそのままクライアントに提出したいし、できることなら誰にも手を加えてほしくない。そんなふうに思う人は多いはず。コーダーである自分も自作のコードを先輩や他人にいじられるのは決して気持ちのいい経験ではなかった。

でもどれだけ自分では「完璧だ!」と思ったものでも、他人の視点から見ると、意外なミスがあったり、理解しづらい構成だったり、60点程度の評価しか得られないことがある。そうした経験を重ねるうちに、自分の思考や評価には「歪み」があることに気づいた。

その「歪み」こそが「認知の歪み」である。

認知の歪みとはなにか?

「認知の歪み」とは、自分の見方や考え方に偏りがある状態のこと。

心理学では、物事を客観的に捉えられず、主観によって現実を歪めて解釈してしまう思考パターンを指すとのこと。例えば「自分がやったことは完璧だ」と思い込んでしまうのもそうだし、「指摘された=否定された」と受け取ってしまうのもその一種だと思う。

こうした思考のクセは決して新卒や初心者だけが陥るものではなく、むしろある程度の経験を積んできた中堅層にこそよく見られるということ。プライドや成功体験が積み重なるほど、「自分のやり方が正しい」という思い込みが強くなり、他人の意見に耳を貸しづらくなってしまう。

認知の歪みが仕事にもたらすデメリット

この歪みに気づかずにいると、仕事にさまざまな悪影響が出てくる。

成長の機会を逃す

他者のフィードバックを受け入れられないままでは、結局いつまでも同じクオリティのまま停滞してしまう。自分では進歩しているつもりでも、周囲から見れば「変わらない人」という印象になってしまうだろう。ただし逆にいえば、素直に意見を取り入れれば、自分では思いつかなかった改善点を学び、仕事の幅を広げられる。批判に聞こえる言葉も「一緒に協力してくれているアドバイスだ」と捉え直せば、次のステップにつながるはずだ。

チームワークが崩れる

「自分が正しい」と思い込みすぎると、周囲とのコミュニケーションが噛み合わなくなる。やがてチーム内で摩擦が生じ、信頼関係が壊れてしまうこともある。信頼を失うと、どんなにスキルが高くてもプロジェクトは前に進みにくい。しかしこれは裏を返せば、相手の意見に耳を傾けるだけで、信頼を築く大きなチャンスになるということだ。多少の違和感を感じても「まず受け止める」姿勢を取れば、相手も安心して意見を交わせるようになり、結果としてチームの力は倍増していく。

クライアントとのズレが生まれる

自分の中では「完璧」でも、相手のニーズとずれていると成果物としては意味をなさない。どれだけ徹夜して作った資料でも、方向性が間違っていれば評価されず、むしろ修正の手間でマイナスになることさえある。ただし、これは大きなチャンスでもある。クライアントとの対話を増やし、初期段階から意見をもらえば、修正は少なくなり満足度も高まる。完璧を追い求めるより「共に作り上げる」意識に切り替えることで、相手の期待を超える結果につながるはずだ。

自分が正しいと思い込むことで、他人からのアドバイスを受け入れることができず誰からもフィードバックやアドバイスをされなくなってしまう。結果的に、自分の成長の阻害の原因になってしまうこともある。

認知の歪みを見直すための3つの方法

認知の歪みを見直すための3つの方法

1. あえて「他人の目」を借りる

提出前に信頼できる同僚にチェックしてもらったり、チームでレビューを積極的に依頼することで、自分では気づけない視点を得られる。たとえば、資料のレイアウトを自分では「見やすい」と思っていても、同僚から「文字が小さくて読みづらい」と言われることがある。本人は慣れてしまって気づかない部分も、第三者には一瞬でわかるものだ。「粗探し」ではなく「価値の再発見」の機会だと捉えれば、他人の目はむしろ強力な味方になる。

2. 「感情の揺れ」に注目してみる

指摘されたときにイラっとする、不満を感じる。そんなときこそ認知の歪みが出ているサインだと思う。
例えば、デザインの提案をクライアントに持っていったときに「もっとシンプルにしてください」と言われた経験は誰にでもあるはず。「こっちのほうが絶対かっこいいのに」と思うのは自然だが、その裏には「自分の感性こそ正しい」という歪みが隠れている可能性もある。
感情が揺れたときこそ「なぜそう思ったのか?」を冷静に棚卸ししてみると、相手のニーズや新しい視点が浮かび上がってくる。

3. 完璧主義を手放す

「100点を出さなければ評価されない」という思い込みは、自分を苦しめ、周囲とのズレを生む原因になる。
たとえば、徹夜で仕上げたプログラムを「これなら完璧」と提出したのに、クライアントから「機能はいいけど使いにくい」「見た目が良くない」と言われることもある。作り込みすぎて修正に時間がかかり、結果として全体の進行が遅れてしまうケースだ。
「ベストを尽くす」ことと「完璧を求める」ことは違う。70点の段階でまず出して、フィードバックを受けながら完成度を高めていくほうが、最終的に早く、かつ相手の満足度も高い成果物になる。

どんなに経験を積んでも、誰の目にも見えていない「思考のフィルター」が、自分の認識を歪めてしまうことはある。

けれど、それに気づくことができれば、仕事はもっと良くなるし、自分自身の成長にもつながっていく。

「自分は正しい」「これは完璧だ」と思う前に、一歩引いて見直してみる。たまには自分の思考にツッコミを入れてみる。そういった手間がよりよい成果物を生み出す鍵になるはず。そのクセがつけば仕事がもっと楽しくなる。


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